良ゲーだけれど、斬新さは感じない
先日アトラスの話題作であるメタファーをクリアしました。クリア時間は100時間ぐらい。
GOTYでも「Best Art Direction」「Best Narrative」「Best RPG」賞を受賞して話題の作品になっていると思います。
難易度はハードでプレイしていました。探索もがっちり目にしたので時間はかかっている方だと思います。サクサク進めたら80時間ぐらいが目安かな?
メタファーのまとめですが、アトラスの集大成らしいかなり面白い作品に仕上がったと思います。アトラスが培ってきたシステムやアート性の高い音楽や映像をストーリーで構成された素晴らしい作品であることであることは間違いないでしょう。
アトラスが積み上げてきた既存のシステムを流用しているということもあり、一つ一つのシステムや作りこみがまるで高級食材を使っているような安心感がありました。一方でシステムそのものの完成度に頼っている部分があり、各システムごとのシナジーというのはあまり感じることができなかったです。
今回のテーマである王道RPGというコンセプトと相性が悪いという感じもしました。
序盤こそ、高いつくりこみを感じる部分が多く、時間を忘れて楽しむことができましたが終盤になればなるほどシステム面でのかみ合わせの悪さが気になりだします。システム自体は自由度が高いはずなのに後半の育成やストーリーの進行には窮屈なプレイを感じる部分が多かったです。
もしアトラスが今後メタファーを重要なIPとして育てていくのであれば、そのあたりを改善していくのが課題ではないかと思います。もし、アトラスの既存のシステムを融合させ、かつ自由なゲーム性を実現することができればアトラスを支える新たなIPとしてユーザーを楽しませてくれるのではないかと思います。
ここからはメタファーというゲームを僕がどう感じたのか、一つ一つの評価をするとともにどういう点が気になったのかをコメントしていこうと思います。
世界観 ★★★★★
世界観としてはかなり凝った作りになっており、冒頭の数時間でその重厚な世界観に引き込まれた人も多いのではないかと思います。種族間の争いや差別、政治の腐敗が話題の中心になっておりそういった社会的なメッセージをゲームというコンテンツを通じて伝えるというのはアトラスらしい設定ですね。
一方で設定が複雑すぎて、ゲームをプレイしていて置いてきぼりになる瞬間もありました。クレマール族、ローグ族、ムツタリ族、エルダ族などの9つの種族が混在する世界で物語が進んでいきますが、話を進めていくうちに「この人はクレマール族?ルサント族?」と設定に置いてきぼりになる瞬間がありました。
メタファーをプレイするにあたっては、わからないことがあればすぐにゲーム中にある辞書を読み込んだので理解できましたが、テンポよくゲームを進めたい人からすると煩わしく感じたのかもしれません。ペルソナシリーズでは現実に存在する東京を舞台にしているので、ペルソナシリーズと比較すると世界観へのとっつきにくさは人を選ぶところだと思います。
ストーリー ★★★★
もしかするとこの作品で一番挑戦的だったのはストーリーの部分かもしれません。というのも今回アトラスが題材にした「王道RPG」というジャンルはアトラスにとっては挑戦的なだいざいだったからです。アトラスは今まで良くも悪くもいわゆる邪道のストーリーで歴史を築いてきました。東京が崩壊して、重要人物が死んだり、裏切ったりとエンタメよりも人の醜い部分をテーマとして描くことが多かったように感じます。そこが他のRPGとは違うアトラスが人気のポイントでもありました。
しかし今回はあえて「王道RPG」というテーマをもって制作された作品であり、王道RPGというのはアトラスにとっては挑戦したことのない作品なのです。
とはいえ序盤からアトラスらしい重いストーリー展開が続きます。作中での退場者が多く、悲惨なシーンも多いです。ただアトラスらしく進んでいくのは序盤だけで、中盤以降は王道RPGらしいベタな展開になっていきます。ペルソナシリーズが終盤に意外な展開が待っていたことを考えるとちょっと物足りなく感じた人が多かったみたいですね。
ストーリー中にも伏線を匂わせるシーンは多いですが、意外性はないストーリーです。
ただ個人的には最後のまとめ方は結構好きで、ゲームを終えた後の読後感は気持ちの良いものでした。詳しくはここに書きませんが、ゲーム内に登場する象徴的なキャラクターが未来に希望を持って終わる。というような締め方をしているので、終わってみれば個人的には好きなストーリーだったなと感じました。
意外性はないものの比較的万人受けしやすいストーリーだと感じたのでアトラス初心者の人にはオススメしやすい作品になっています。
音楽 ★★★★★
アトラスの音楽はやはり最高です。メインテーマでお坊さんにお経を読ませるとはとはアトラス以外のどのゲーム会社ができましょうか?
ペルソナ5の音楽と比較するコメントも多いようですが、そもそもペルソナ5のようなアシッドジャズがメタファーの世界観に合うはずもなく、メタファーにはメタファーの世界観に合った音楽があるわけです。
今回のメタファーがゲーム業界だけではなく音楽業界にも与えた影響は大きいのではないかと思います。とにかく聞け。それだけです。
キャラデザイン、映像 ★★★
キャラデザインに関しては過去の作品と比べると普通といったところでしょうか?さすがに過去の女神転生シリーズの悪魔デザインやペルソナシリーズの制服をアレンジしている学生達が魅力的過ぎたというのがあり、それと比較すると物足りなさを感じました。
また映像に関してはアトラスの今後の課題ではないかと思います。街を歩いていると作りこみは感じるのですが、映像自体のクオリティがそこまで高くないですね。ストーリー中はところどころにアニメーションを挟んでごまかしていましたが、最新のゲームと比べると見劣りする部分は感じました。最近のゲームは本当にリアルなCGのゲームは多いので、映像に関してはアトラスの今後の作品に期待したいですね。
カレンダーシステム ★★★
ペルソナから流用しているカレンダーシステムですが、システム自体はよくできたシステムだと感じます。ただし、今回のテーマである「旅」との相性は良くないと感じました。
元々、ペルソナシリーズは学生が日常生活を過ごしながら、シャドウという非日常と戦うことで日常と非日常を行ったり来たりするのが魅力的な部分だったのではないかと感じました。
カレンダーシステムによってバイトをしたり、遊びに行ったり、恋愛をしたりという何気ない日常を疑似体験することで感情移入がしやすく、同時に世界を守るというファンタジーな部分にも入りやすいわけです。
今回の「旅」は非日常に当たると感じました。時期によって滞在する町が決まっているので旅に自由はなく、まるでツアーに参加させられているような気持になりました。本来は広い世界のはずなんですが、行動範囲が制限されているため、あまり世界の広さを感じることがなかったです。ユニコーンオーバーロードのように自分が探索するダンジョンを自由に選択していけるようなシステムであれば、もっと世界の広さを感じることもできたでしょうし、旅をしているような感覚を味わえたのではないかと思います。
またメインストーリーも日にちの期限が来ると強制的にストーリーが進んでしまう部分が多く、それだったらメインをP3のような1か月に1回ボス戦があるみたいなストーリーの方が良かったのではないかと感じました。カレンダーシステムが良くできているだけに、それを活かしきれていないのが残念でしたね。
アーキタイプ ★★★
アーキタイプは世界樹のジョブシステムがベースだと思われます。
序盤こそ、キャラクターが少ないため自由にアーキタイプを選択する楽しさがありました。編成を考えるのが楽しかったですし、途中でマジシャンを2人にするなどの尖った編成もすることができました。ダンジョンでも敵の弱点に合わせてアーキタイプを選ぶ楽しさがありました。
ただし、中盤以降ジュナが加入する辺りから、7人いるキャラクターの役割が固定化されていきます。最終的には各キャラクターの専用アーキタイプがあるため、そのアーキタイプを履修するために必要なアーキタイプを履修していくという流れになります。
アーキタイプ自体は自由度の高いシステムなのに、結果的には育成方針をゲーム側から指定されるという流れになるため、終盤は不自由なキャラ育成を強いられるようになります。せっかくの面白いシステムが勿体ないと感じました。
アーキタイプはサブ的な育成要素に留めておいた方が、アーキタイプを付け替えて育成する楽しみがあってよかった気がしますね。
プレスターンバトル ★★★★
女神転生シリーズから流用したプレスターンバトルですが、こちらはファスト&スクアッドとの相性は良かったと感じました。
やはりプレスターンバトルは楽しいですね。今回からフィールドではアクション要素で敵を攻撃してから戦闘に入るというファスト&スクアッドというシステムが採用されましたが、敵の攻撃を食らってしまうと失敗となり、敵のプレスターンから始まるということでアクションパートに程よい緊張感がありました。
敵に先制を取られてしまうと、こちらのターンになる前に全滅してしまったことも多く、思わず叫んでしまったことも多いです。
ただ、今回のアーキタイプとの相性は微妙で、アーキタイプの育成のために敵との相性が悪いスキル構成になってしまったことも多かったです。育成のために敵との相性が悪いアーキタイプを装備することになり、無駄に時間をかけてしまっていたことも多いと感じました。
プレスターンもアーキタイプもどちらも面白いシステムだとは思うので、ここは調整次第ではもっと面白くなるのではなりそうですね。
あと、プレスターンは敵の弱点を突く技が強いという性質上、どうしてもマジシャンのような多くの属性を使えるアーキタイプが強く、確率が低く行動が増えない状態異常はあまり使わなかったですね。
【まとめ】一つ一つの要素は面白いが、気になる点も多い
メタファーの全体的な評価としては、
音楽は最高。
ストーリーと世界観は複雑な割に終盤がベタで好みが分かれるが個人的には好き。
カレンダーシステムは悪くなかったがもう少し自由に旅をさせる仕組みにしてほしかった。
アーキタイプは思っていたほど自由度が高くない。
プレスターンバトルとファスト&スクアッドの相性はよい。
という感じです。
総合評価 ★★★★☆
★4つです。全体的には良作であるのは間違いないですが、気になるところは結構あるゲームです。ただ、アトラスの集大成であることを考えるとアトラス初心者の人にはオススメしたい作品になりますね。
アトラスと言えば完全版商法と言われるぐらい、数年後に別バージョンを出す会社ですが、僕の希望としては、今回のユーザーの不満部分などを活かした別の作品を作ってほしいなという感じです。個人的にはスピンオフかメタファー2にして、自由な旅ができるゲームになればアトラス最高傑作になるのではないかと期待しています。
アトラスの作品は好きなので今後も応援していきたいと思いますね。
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